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ここに命が生きている限り、私は、ここに来ようと思う。牛たちは今日も草刈りをしながら、この土地を守っている。

震災と原発事故により、この地域では人々が着の身着のままの避難を余儀なくされ、
大混乱の中、牛たちは牛舎に取り残されました。
飼い主たちが最後に置いていった餌と水の尽きる中、
多く命が、次々と失われていきました。

その中で、壊れた牛舎から、命からがら野山へ逃げ、生き残った牛たちがいました。

しかし、その牛たちも、徐々に捕獲され、
飼養管理ができない場合は処分されるか、
飼養管理できる場合は避難区域内から出さないかの2択を迫られることになり、
当時、避難区域内での飼養管理は困難と思われたことから、処分が推奨されました。

飼い主の方達も、家族同様に大事に飼ってきた牛が心配でたまらないのに、
世話に行きたくても行けず、毎日大量の餌や水を運びたくても運べない、
どうにも出来ない状況がありました。
そこにある悲しみと絶望は、とても言葉にできないほど深いものとなりました。

私は、その姿を、これ以上見たくありませんでした。
せっかく命をながらえたこの牛たちに「生きてほしい」と願いました。

そして、農家の方達とともに、柵を作り、さまよっている牛たちを1頭1頭集め、
警戒難区域内でも飼養管理できる、手間の極小化された新たな形の飼育を模索しはじめました。

一方で、避難生活によって何年も手をつけられていない庭や田んぼ、畑は、
雑草や木に覆われ、藪や森となっていきました。
民家がある場所にもイノシシ等の野生動物が住むようになり、
地域そのものの保全もままならない状況が続いていました。

私は、その状況下で、牛たちがいたところだけ藪がきれいになっている光景、
雑草や木立をバリバリ食べていく姿を見て、思いました。

「 この旺盛な食欲で、この状況を打開していくことが出来るかもしれない。
生き抜くために雑草も木も大好物になった牛たちは、
毎日、農地に生えた雑草や木を食べている。まるで草刈りをするように。
それは、この土地の保全に役立つのではないか?
それが彼らの生きる道となり、処分を免れるかもしれない 」

私は、農家の方々や専門家とともに検証を始めました。
そして、柵さえ作って放牧させれば、後は勝手に草を食べて、糞も自然分解されるので、避難区域でも飼養管理ができること、
また、牛たちが荒れた田畑などに生えた雑草や木立を食べることが、
人が住めない地域でのクマやイノシシ等の野生動物、病害虫の大量繁殖を抑え、崩れた生態系を回復させる効果があり、
火災や不法投棄の軽減にもなることがわかって来ました。

それは、地主さんたちにとっても嬉しいことでした。
「イノシシや野生動物がどんどん家に近い場所に出現するようになり、自分の家なのに近づくのも怖い、
草刈りもどこから手をつけたらいいか分からない、ジャングルになった庭を見たくもない、、」
そんな暗い気持ちが、牛たちが草刈りをしてくれたことで、一気に晴れていったのです。
また、元々の庭にあった花が再び息を吹き返した家もありました。

人が管理しきれない土地の草刈りを牛がすることで、土地の保全が出来る。
被災牛たちが、役目を持つことができれば、
被災牛たちが生き続ける理由になる。

餓死や処分等で愛する牛を失ってしまった方々が、
苦しみの中でも、協力して下さることに、心より感謝しながら、、
そして誰よりも生かしたかった思いをつなげられるよう、、

私は、東日本大震災を生き延びた牛たちに、
毎日お腹一杯草を食べることで活躍し、
人も動物も、その他自然もいきいき輝ける空間を作ることで、
少しでも被災を乗り越え、この地に再び笑顔が戻ることを、願っています。

ふるさとと心を守る友の会の代表
谷 さつき

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事務所:福島県いわき市平字白銀町2-10 タタキアゲベース217
もーもーガーデン: 大熊町野上姥神の旧都路街道沿い

Googleマップで「もーもーガーデン」と検索すると出てきます。
最寄り駅:JR常磐線富岡駅(車で15分)
※2020年3月に再開予定の大野駅からの場合、車で5分程度になります。

※入り口部分は解除された国道288号線に面しているため、車で来れますが、園内へ入るには、帰還困難区域内への立入許可証が必要です。帰還困難区域立入許可証は、来園日の2週間前までに、メールフォームよりご連絡いただけましたら、役場の手続きを経て発行可能です。